これまでのアルツハイマー病の薬

新薬『アデュカヌカブ』のFDAの承認発表から、話題の中心になっていますね。エーザイの株価が二日連続のストップ高を記録したことからも、この薬に対する期待が伺え知れます。とは言え、条件付きの承認であったり、日本での承認は早くても年内ということを考えるともうしばらくは既存の薬による治療が継続されます。

そこで、これまでのアルツハイマー病の薬について少し整理してみようと思います。

商品名「アリセプト」は、一般名ドネペジル塩酸塩といって日本では1999年10月に承認され、アルツハイマー病に最初に使われたお薬です。分類としてはコリンエステラーゼ阻害薬という分類に属し、脳内の神経伝達物質(アセチルコリン)の量を増やし、認知症における記憶障害(もの忘れ)、実行機能障害(問題解決能力の低下)、見当識障害(時間や場所の見当がつかない)などの症状の進行を遅らせる薬として使われてきました。当初は、「軽度及び中等度アルツハイマー型痴呆(認知症)における痴呆(認知症)症状の進行抑制」を効能効果として承認され、その後、2007年8月に「高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」、2014年9月に「レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」に関する効能・効果が追加承認されました。そして、その後このコリンエステラーゼ阻害薬として、商品名「レミニール」が2011年1月、「リバスタッチ」「イクセロン」が2011年4月に承認されました。

別の分類にあたるNMDA受容体拮抗薬であるアルツハイマー病治療薬、商品名「メマリー」は、一般名メマンチン塩酸塩といって日本では2011年1月に承認され、中等度から高度アルツハイマー型認知症の標準的治療薬の一つとして使われ始めました。

アリセプト以降の薬剤は、いずれもアリセプトが使用されて10年以上が経過した後にはじめて日本で承認されていますが、欧米ではすでにこのおよそ10年前(2000年あたり)から、これらの薬剤が使われてきました。この段階で日本は欧米に比して10年遅れで承認された格好になります。

これ以外にも興奮作用が強い場合などは、漢方の「抑肝散」がしばしば用いられます。

いずれにしても、これまではアルツハイマー病の症状を緩和したり、進行を遅らせる効果のものでした。今回発表された「アデュカヌカブ」は、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβに直接働きかけてお掃除をしてくれる作用のようですから、そこで症状の進行が「止まる」ということになりますね。これまでとは全く異なる薬です。ここ10年ほど新薬の話題が表になかなか出てこなかったので、更に話題になりますね。報道では、早ければ年内に日本でも承認されるのでは…と言われています。追加の検証によってはFDAから承認取り消しの可能性もほのめかされていますが、日本での承認作業が少なくともこれまでの薬のようにここから10年後の結論とはならないよう切に祈ります。

アリセプト
アデュカヌカブ

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