タクティール®ケアについて

タクティール®ケアは、スウェーデン発祥の癒しのケアです。この施術は、未熟児のケアから始まったとされています。未熟児は、生まれてすぐに母親と分離され、保育器で管理されてしまいます。正常で分娩された赤ちゃんであれば、生まれてすぐに母親との接触が始まります。抱っこされ、撫でられ、母乳を与えられ、おむつを替えるなど様々な身体接触を経験します。しかしながら、未熟児で生まれた赤ちゃんにはこの機会を同等に与えられません。そこに着目した看護師は、しばしば時間のある時に保育器に手を入れて未熟児の赤ちゃんをやさしく撫でてあげました。

そうした関わりを続けたところ、未熟児の赤ちゃんの体温や血圧などのバイタルサインが安定し、ミルクの飲みも良くなりました。また、その後の成長にも良い影響を与えたとされています。

その経験から、障害者やがんの患者に対してもこの触れるケアが施されました。後にスウェーデン社会庁の研究プロジェクトに取り上げられ、触れるケアが良い効果をもたらすとされ、対象者の裾野も広がってきました。そして最近では、認知症に対しても良い効果をもたらすことがわかってきました。

認知症の方には、次のような目的でタクティール®ケアを行います。

  • 介護抵抗・閉じこもりなどに対し、言葉を介さないコミュニケーション手段で、相手との信頼関係を築く
  • 不安・抑うつ・イライラなどの症状を和らげる
  • 運動機能や感覚機能には問題がないのに、歩きにくい、箸を使いにくいなど、自分の身体を上手く使いにくいという症状(失行)に対し、自分の身体の部位への認識(身体認知)を高める
  • 夜間よく眠れていない、不安やイライラがあって食事が十分に摂れない、落ち着いて過ごせないなどの症状を緩和し、生活の質(QOL)の向上を図る

認知症緩和ケアに基づくタクティール®ケアの活用

認知症緩和ケア理念には、4本の柱があります。

・患者の症状を解釈し、治療対応する症状コントロール                                           ・本人家族も含めたチームワーク                                        ・日々の悩みを整理し、無理なく介護ができるよう家族へのサポート                                             ・患者、家族、スタッフ間の良好なコミュニケーションと関係構築

                                                    これら認知症緩和ケア理念に基づいて、補完的手法としてタクティールケアを取り入れることが、認知症の方とそのご家族へより質の高いQOLの提供につながります。

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